パリからの高速列車で一時間半、ベルギーへ-。

早朝のブリュッセル。吐く息の白さでパリよりずっと北に来たのだと気づいた。ひんやりとした朝の風が心地良い。
小雨の中、アールヌーボーの美しい街並を歩く-。
ふと入った現代風なレストランにもさりげなく独特の美しい曲線が残されている。ひとつひとつが丁寧に。

街の中でひときわ存在感があったのが楽器博物館。重々しい黒い外観と空の白さのコントラストが印象的だ。
良く見ると鉄のバルコニーはチェロや楽譜の形に型どられている。とても凝ったディティール。
1898年に服飾品店の為に建てられたそうだが、今は世界の楽器が展示されている。
薄暗い空気の中にたたずむその姿は、子どもの頃に想像し憧れていたヨーロッパのイメージそのものだった事を思い出した。

すれちがうひともシックでさりげないセンスが光るブリュッセルの人々。幼い頃から美術品のような街と共に生活しているベルギーの人々の事を思う。

近づいてくる路面電車に好きなように飛び乗り、また好きな風景で降りる。そして歩く。
そんな気軽さなのに、かえって得るものが大きな旅だった。



Page14(文・写真/ K. Tadano )



BACK


Copyright (C) FORTUNA. All Rights Reserved.