前回に引き続きブリュッセルよりさらに北にある運河の街、ブルージュへ。
『北のベニス』といわれている街だ。

ブルージュはヨーロッパらしい良く手入れされた公園と石畳の道が続く、静かな佇まいの小さな街。
運河に架かる小さな桟橋や可愛らしいバルコニーのついた家々はまるで絵本の世界で、女性なら皆うっとりしてしまうだろう。

細い迷路のような道が続く。そんな道が多いせいか、たくさんの人々が自転車で移動している。
エレガントなマダムさえも颯爽とカーディガンをなびかせて素敵に乗りこなしている。
車が少なく、ゆっくり散歩する人、犬を連れている人、自転車に乗る人がほとんどで、街の中は無駄な音のないゆっくりとした時間が流れていた。

私達もそれに習って、運河添いの小さな道をサイクリングする。
その日は秋晴れで暖かく、うっすら汗をかきながらも風を切って走り、小さな丘のうえの風車の下で休んだ。
何かを話す必要もなくて、お互い黙っていた。
どこから来てどこへいくんだろうと川を見つめていた。
静かで穏やかな空気の中で、普段忘れてかけている風の音だけが通り過ぎていく。


水辺に立ち並ぶ建物の壁が紅葉したツタで真っ赤だ。
それは今年はじめて見る、目に痛いほどの鮮やかな秋の色だった。



Page15(文・写真/ K. Tadano )



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