暗い廊下の奥にひっそりとある小さな部屋。
剥がれたままの壁紙、石膏の彫刻の破片が薄暗い部屋に浮かんでいた。
その中に、無造作に積み上げられた白い食器たち。

華やかなブティックが並ぶサントノーレ通りにひっそりと存在する食器の店「Astier de Villatte」。
もとは画材店だったという店内は懐かしい古い図書館の匂いがした。

19世紀の食卓を思わせるクラシックなデザインの皿やコンポート。
持ってみるととても軽くて繊細で、そっと…注意深く手につつみこんで選んだ。

食器と共に置いてある古いマッチ箱や、虫のうめこまれた文鎮がだいじそうに並んでいる。
誰かに見つけてもらうのをずっと待っているみたいに。
古くて美しいもの、はかなげなものに対する、店主の愛情が感じられた。

そして今、自宅のテーブルの上に一枚。 Astierのあの空気を思い出してちょっと嬉しい。



Page19(文・写真/ K. Tadano )   

 



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