グラン・パレにエジプトの遺跡展に行こうとしていたら、プチ・パレで展覧会が…。
スペインの画家、Joaquin Sorollaの展覧会だった。

20代の始め。はじめてヨーロッパ旅行した時、名前も知らずに彼の画集を買った。
「Peintres de la lumiere」という展覧会のタイトルの様に、「光」を常に感じさせる画家だ。
キラキラと生きている人々の輝きを感じる作品。木漏れ日。光。
そういえば最初はフランスではなく、スペインに惹かれていた自分を思い出した。
明るい陽射しやおおらかな人達。

20年前、三ヶ月間、リュックを背負っての貧乏旅行だった。
親戚の女の子と二人であてもない旅。旅の途中で出会った人達の恩恵を受けながら、ただただ見るものすべてが新しく刺激的で魅力的だった。
ガウディやミロ、立ち飲みのバール、ダリの美術館、etc…

そのなかでも、今でも心魅かれる場所がある。
スペインの最南端にある「カサレス」という白い村。
この村に私の遠い親戚の男の人が住んでいて、ふたりで彼をたずねていった。

細い細い道を注意しながら山を登っていくと山頂にある小さな白い村。
ぽつんとチャペルがあり、商店が一軒しかない。一周しても一時間かからない程の小ささ。
そして夕暮れ時の鐘が鳴り、傾斜に建てられた白い家達が夕焼けに染まって美しいオレンジ、そしてピンクに変わる。
ピンクオレンジの小さな村が空に浮いて見えた。この世のものでないみたいに。
それは私の記憶の中でいちばんうつくしい「光」の色だった。
Sorollaの描く「光」だ。スペインの色だ。

20年前に買った画集。再会。大切にしよう。…と思う。





Page31(文・写真/ K. Tadano )   





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