花を触れるようになったのは、今の先生のお陰。
基本を押さえつつも、自由に生けさせて頂けるのが楽しかった。
生け花は花器のなかに、水面、空間、花、風が完璧におさまっている。小宇宙。ミニマルな世界。
最大に無駄なものをそぎ落とし生ける先生の作品は、男性ならでは…と思う。

その先生に本、ビデオを見せて頂いたのがベルギー出身のフラワーアーティストである、ダニエル・オストだった。
彼の作品集は英国のドンサイド展で「世界一美しい本」として銀賞を受賞した。他、京都の東寺や仁和寺でのエキシビジョンやベルギー王室の装飾など幅広く活躍している。
彼の手にかかると白い砂と岩だけのアラブの砂漠が瞬く間に、無数の白い花とキャンドルやオブジェで彩られ、オレンジ色の沈む夕日の自然光がこの世のものではないみたいな…美しいウエディング・パーティ会場に変わる。
他に類を見ないドラマチックでファンタジーな世界だ。

そんな彼の世界に直接触れたくて、パリからベルギーに赴いた。
路面電車が行き交うブリュッセルの街の中心。 彼の店はアールヌーボー建築が美しいブティック。ウィンドウにはどこか盆栽ににたアレンジが飾ってあった。

店内は中国を思わせる深いバーガンディ色の棚に不思議な形の花器がたくさん並んでいる。
テーブル上の巨大な花器には生き物みたいな真っ赤な大量に花が差してあった。
おひとり日本人のスタッフのかたがおり、丁寧に説明して下さった。
「世界一美しい本」や空間をつくり出す場所。ためいきばかりの瞬間だった。


*ミニマルで感性豊かな彼の作品はダニエル・オストのHPで見られます。一見の価値ありです…!





Page35(文・写真/ K. Tadano )   





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