たくさんの色鮮やかなウインドウ。

見ているだけでとても楽しい。

どれもこれも、お店の個性を活かしていて、

パリでは、本当の「ウインドウショッピング」が楽しめる。



自己演出が本当にうまいなぁ…と思う。

つい、お店に入ってみたくなるような見せ方。



数年前の冬、

パリの左岸にある大きなデパートのウインドウは

クリスマスの売り出し商品のディスプレイではなく、

6箇所ほどあるウインドウで連作になっている

「眠り姫」の物語りの展示だった。



それは、静かに動く美しいマネキンのお姫様と王子様の物語り。

金の衣装で飾られた、美しい夢の世界だった。

糸巻きの毒針に刺されたお姫様は、長い長い眠りについてしまう…。

長い睫、白い肌。ゆっくりとまぶたを上げた人形。

生きてるものより、優雅だった。



つい足を止めて、「物語り」に引き込まれていたのは

私だけではなかった。

若い人、おじさん、子供たち。

さらに突然、たまにしか降らない雪もキラキラ降って来て…



一瞬、現実を忘れさせてくれたその光景は、

差別なくみんなに与えられるクリスマスの贈り物みたいだった。

何年も前のことなのに、忘れられない光景。

そんな世界を作れるこの街に、また「世界の人が憧れるパリ」なんだな…と感じる。





Page51(文・写真/ K. Tadano )   





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