「Paris Dialy」〜パリのこと、日々の生活の様々なことを綴っていきます〜


(前号からのつづき)

「僕、パリでバレエが見たい」

というゲイのTちゃんの一言で
何故かパリ行きはすぐ決定しました。

それから半年、昼夜アルバイトし渡航費を溜め、
4人で一ヶ月半の初の海外旅行に出発。

初心者なのに、25年前まだ少なかったフリー旅行を選び、
ユーレイルパスを買って、自由に列車を乗り継ぐ旅を選択した私たち。

フランス、スペイン、モロッコ、スイス等、
何カ国か列車で渡り歩きました。
なにもかもわからないことだらけの珍道中。

楽しいことがほとんどだったけど、
モロッコでは、絨毯を買わされ、
スペインの丘ではナイフで脅される事件もあったり。

初めての旅行で、
旅の洗礼を一挙に受けた感じです。
でもそんなアクシデントなんかより旅は数十倍楽しかった。
新しいものがどんどん目の前に広がっていき、
「世界は広く美しい」と痛感!

そんな手探りの旅行の
最初の到着地は
1986年冬のパリでした。

札幌しか知らない20歳の子供だった私に
パリは超シックな世界だったのです。

グレーのグラデーションで描いたような街並みや、
セーヌ川をゆっくりと漂う観光船。

高級ブティックから出て来た、
薄いグレーの髪と同じ色のコートを着た上品なマダム。

囁くようなフランス語の響き。

ただただ美しく、
まぎれもなく心を動かされたのでした。
衝撃。

残念ながら今のパリには、
たくさんの色が溢れていて、
あの時代のような淡いグレーの世界はないけれど…
あの日のことを今でも思い出します。

あの旅行に行った4人のうち、
現在、私はフランス仕入れの今のブティック、
Tちゃんはフランス直営のインテリアの会社に勤めています。

あの珍道中がくれたフランスへの縁。
初めて行った街がパリでなければ今の仕事をしていなかったのかも。
人生、本当に何がきっかけになるのかわからないですね。

今だから思うこと。
誰かが運んでくる「良いな」と思うことにちょっと乗っかってみるのも、
実は大きな転換期になるかもしれません。

そしてやっぱり、パリに行くことになったきっかけは、
Tちゃんの「僕、パリでバレエが見たい」
あの一言だったんだと思います。



Page 81 (文・写真/タダノカオル)



★Paris Diary / Back Number
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 .... 80


*69〜79までのバックナンバーは工事中のため、後日掲載致します。(毎月15日更新)



Copyright (C) FORTUNA. All Rights Reserved.